らぽさんです。
本日ご紹介したい本はこちら。
今後、長期投資をメインとしていきたい自分にとってはとても有意義な情報の詰まった本でした!
一言で表すなら「高ROEかつそれを継続できるようなビジネスモデルの優良企業を、割高でない時にコツコツ拾っていく」という感じでしょうか。
【こんな人におすすめ】
なんとなく株をやってきたけど、そろそろファンダメンタルを中心に中長期で持てる銘柄を探したい。
ROEと株価の関連性について知りたい。
テンバガーとなる銘柄を雰囲気だけではなく、ちゃんとした根拠をベースに探していきたい。
テンバガー(10倍株)を手にするための3つの条件
本書で述べられている3つの条件は下記のとおりです。
ROEが12%以上の実績
ROEとは当期純利益に対し、株主資本(自己資本)で割った指標になります。簡単に説明すると、これが高ければ高いほど効率的に利益を上げているということになります。
その数字を本書では重視しているわけですが、ROEが上昇する時はどんな時か。
・株主資本が増えるペースよりも当期純利益が増えるペースが大きい場合
・利益水準が変わらなくても株主資本が減少する時
高ROEであれば、それだけ株主資本が増えていきやすいということになります。結果、株価に長期的に反映されていくということですね。
ちなみに高ROEであればなんでも良いという話ではないのでご注意。自己資本が低ければそれだけROE高くなりますが、ひっくり返すと財務が不安ということにもなりかねません。
個人的に面白かったのは、よく日本株は米国株に較べてダメという切り捨てられ方をすることが多いですよね。それの理由の一つとして、日本の企業はROEが米欧に比べて圧倒的に低いという視点はとても面白かったです。(日本と米国では平均で2倍くらい差が開いている)
上記のROE水準以上を今後も複数年にわたって実現できそうか
高ROEが継続できるということはそれだけ株主資本を安定して積み上げることができるということです。これが一時的なものであったりするなど安定的なものでないならば、株主資本も積みあがるどころか毀損する可能性もあります。
利益成長を継続できそうか
株主資本を毀損せずに高ROEを継続していくためには、利益成長を継続しなければなりません。ビジネスモデルがしっかりした内容でなければこの条件を達成するのは難しいと言えます。
本書に出てくるファンドマネージャーの言葉が印象的です。
株主資本が増加し続けることで上場企業の株価の下値は切りあがっていくんだよ。~中略~
P68より引用
赤字にならない企業を株価が大きく下落した時にコツコツ拾っていくと、長い目で見るとリターンは大きくなっているものだよ。
利益を赤字とさせてしまうと、株主資本を毀損させることとなります。毀損させると、株主資本にかかる複利の効果は株主資本が減った分だけ弱くなります。こうして毎年利益を積み上げて(減益の時もあるかもしれないが)株主資本を増やし続ける企業と、そうでない企業の間では株主資本の複利効果で大きな差が出てきます。
過去のテンバガーを見ても、高ROEで売上及び利益を高めている企業は株価も跳ねている
本書ではエムスリー、MonotaROなどの上記で挙げたような項目をクリアしている企業を紹介しています。M&Aだったり、テクノロジーを使って商流を変える(オフライン→オンライン等)などの経営を通じて成長してきた企業が一例として挙げられています。こうした企業は後述するテンバガーとなるループに入りやすいとも言えます。
実は以前書いた記事で会社四季報をスクリーニングしたところ、大きく伸びていた企業は軒並み高ROEかつ売上高を順調に伸ばしていたという体験があります。ベイカレントコンサルティングやオイシックス・ラ・大地、ラクスとかですね。高ROEだから株価が伸びたと短絡的には結び付けられませんが、株価が伸びる要因の一つとして高ROE体質というのは頭に入れておいていいかもしれません。
テクノロジーが既存する競争のルールを一変させ、テンバガーを生むこともある
- 商品やサービスの流通の仕方を変える
- 今ある仕事や作業を便利にする
- ライフスタイルを変える
テクノロジーを用いて、こうした競争のルールを一変させることができる企業は大きな成長をする可能性を秘めています。そうした企業を見つけ、投資していくのもロマンがありますね。
テンバガーとなるループ
売上増→営業利益増→当期純利益増→株主資本増→資金調達有利→設備投資・研究開発・M&Aの選択肢増→売上増…
このような良サイクルに入ると会社はグングン成長します。このことに気付くためにも売上高や営業利益の伸びを見るのは必要ですね。
逆にこの真逆の項目が発生すると逆回転になりかねないので注意が必要です。減益・減収の決算で株価が暴落するのは投資家が負のサイクルを懸念した結果なのかもしれません。
本書で言うなら、たとえ減益で暴落したとしても一時的なものだったり外部要因で上記の良サイクルに影響を与えないような理由であれば、減益等の悪材料による下げはバリュエーション的には旨味が出てくるので買いという捉え方もできます。
テンバガー発掘のために、具体的に何をすべきなのか
では今後、具体的に出てくるテンバガーとなりうる銘柄はどう発見すればよいのか?本書では下記項目を元にスクリーニングしていくことを述べています。
- 売上高
- 営業利益
- 当期純利益
- 株主資本
- 純資産
これらを10年以上見ていきます。なぜ10年以上かというと、リーマンショック時のような有事の際に利益を出せていたかだったり、景気のサイクルも一巡しているので経営の実力が反映された結果を見ることができるからです。
具体的にはこんな感じ。
- リーマンショック時の決算の当期純利益が赤字ではない
- 過去5年間、当期純利益が赤字ではない
- ROEが過去3年間の平均で12%程度あるか
- 過去3年の株主資本比率の平均が50%以上か
- 5年前よりも直近決算の当期純利益が大きいかどうか
高くてもいいから買おう!ではなくバリュエーションを検討する
ここまで見て、自分なりに「買いだ!」と思っても早まってはいけません。どんなにいいものに見えても、割高で買ってしまってはその後の期待値は低くなります。
過去を振り返り、割高ゾーンで買っていないかは確認することも必要です。
良い企業だから株価も上がるに違いないというのは負け戦になりそうです。
割高の時に買っても旨味はありません。
バリュエーションの具体的な試算のやり方については、ぜひ本書を手に取ってみてください。
【まとめ】複利とバリュエーションを意識した投資を
短期のスイングの難しさに薄々気付き始めている自分にとって必要な内容でした。
上記に挙げたような素晴らしい経営をし続けている企業であれば、頻繁な株価チェックも必要ありません。暴落時も企業経営を揺るがすような内容でなく地合い等の外部要因であるなら、むしろコツコツと拾っていくのは怖くないと感じますね。
平時では株主資本を着実に積み上げている企業を調べてリストアップし、地合い等で大きな下落をしてバリュエーション的にも割安な時に買えれば、その後の大きなリターンを得やすくなります。
むしろそうしてリストアップした後は、大きな暴落等がない限りは相場に張り付く必要はないのかもしれません。虎視眈々と買い増す時を待ちながら、それ以外のことで日々を充実させることができますね。
この本を読んで、投資に近道はないなあと改めて感じました。テンバガーとなりうる企業を拾っていこうとするならば、本書で挙げられているような手法でコツコツと企業研究やスクリーニングをしていく努力が必要です、逆に言うならば、そうした正しい努力ができるのならばじっくりとテンバガーを自分のものとすることができるということを本書は教えてくれます。
投資をある程度自分でやってきて、中長期投資を深く学びたいという方にお勧めな良書です。
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